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1974年1月のある朝、研究所で飼育されていたチンパンジーたちに冷たい鉄の檻から外に出て草むらの上を走るチャンスが訪れた。

彼らは6年ぶりに太陽の光を見た。だがあまりにも長い監禁生活は、彼らを臆病にさせていた。

 「かなり怯えて搬送用の檻から出ようともしませんでした」と世話係だった動物学者リンダ・コーブナー氏は、1999年製作のドキュメンタリー『The Wisdom of the Wild(野生の知恵)』でそう語っている。

 「草の上に足を乗せるのが怖かったのかもしれません。何年も固い鉄棒にしか触れたことがなかったんですから。あるいは風や太陽が怖かったということもあるでしょう。入り口のところで身を縮こまらせて、出てこようとはしませんでした」
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しかし、当時大学院生だったコーブナー氏は彼らをなだめてどうにか草の上に連れ出した。


 チンパンジーたちは肝炎研究用の実験動物だったのだ。

ワクチンがようやく完成したため、研究所からはもう必要とされていなかった。そこで南フロリダの保護地区にかえすことになったのだが、そのためには野生で生きる方法を教える必要があった。


 のちにルイジアナ州でチンパンジーの保護施設、チンプ・ヘブンを設立することになるコーブナー氏は、研究所から解放されたチンパンジーらと4年間、ずっと彼らと共に過ごした。
 
 彼らが野生で生きられるよう助力したコーブナー氏。そして別れの時が来た。

 それからおよそ20年後、
 コーブナー氏はまだそこで生活している子たちと再会を果たす。

 長い年月を経たにも関わらずチンパンジーたちは命の恩人であるコーブナー氏を決してわすれることはなかったのだ。

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「本当に久しぶりね。立派になって」とドキュメンタリーの中で感激の面持ちの彼女。

 コーブナー氏は長い間チンパンジーたちと一切顔を合わせていない。そのため、敬意を示すためにいきなり近づいたりはしなかった。

 それから少しづつ距離を詰めて、手を伸ばす。「覚えてる?」と尋ねてみた。

 
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 スイングという名のチンパンジーは、満面の笑みを浮かべ、手を伸ばし彼女の手をとった。その瞬間、ぎゅっと抱き締めた。そこへドールという名のチンパンジーも加わる。 

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「この子たちは境遇に負けないことを教えてくれました。みんな大変な状況を過ごしてきたんです。それでもそれを許して、きちんと回復してくれました」
 
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チンパンジーのDNAは98.8%までが人間と一緒だ。

薬品やワクチン開発においては理想的なモデルとして利用されてきた。


 それゆえに感情表現も人間ととても良く似ている。コーブナー氏と再会したチンパンジーは目に涙を浮かべ、その嬉しさを抱きしめ、そしてキスし、全身全霊で表したのだ。 

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アメリカではチンパンジーは昨年秋に絶滅危惧種に登録され、実験動物として使用することはできなくなった。しかし、悲しいことだが、未だに数百匹ものチンパンジーが研究施設におり、正式に野生に帰れる日を待っている。
 
 人間に近い故に実験に使用されるチンパンジーたち。だが人間に近いからこそ人間と同じように感情を持ち、一度でも自分を大切に思ってくれた人には最愛の思慕の情を示すのだ。

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ぎゅっと手を握りしめるその動作も人間と一緒なのである。 

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 チンプ・ヘブンは実験動物となっているチンパンジーを救うため、日々活動を行っているという。 





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