ハクチョウと男性の出会いは2014年の秋のことだった。
イギリス南部にあるハクチョウの保護施設、アボッツバリー・スワネリーに、テレビ番組の取材で訪れたリチャード・ウィーゼは1羽の傷ついたコブハクチョウを見つけた。
そのハクチョウは鉄製のフェンスで深い傷を負い、この施設へやってきたのだった。
リチャードは傷ついたハクチョウを心配し、自然に帰れるよう常に寄り添っていたという。
そんなリチャードの気持ちが通じたのだろうか?
ハクチョウはその身を安心してリチャードに預け、まるでマフラーのようにリチャードの首に巻きついてきたのだ。
ハクチョウは、野生動物でありながらも、人間であるリチャードを絶対的に信頼し、彼の腕の中が安全であることを確信しているのように、自らその身を、その首を預けてきたのだ。
リチャードも、ハクチョウのこの行為に驚き、そして嬉しさのあまり、感極まったという。
ハクチョウがマフラーのように首に巻きついてくるなんで、めったにできる経験ではない。
ハクチョウは優雅が美しい鳥だが、怒らす割と凶暴で、アグレッシブで攻撃的な一面もあるという。
気を許した仲間に対してはこれほどまでに慈愛に満ち溢れているのだ。それが人間でもだ。
ハクチョウは恋人同士になると頭をあわせ、首でハートの形をつくるという。首を使うのはいわば愛情表現の一種である。人間はそれほど首が長くないので、その首を絡ませマフラーとなることで、その愛情を表しているのだろう。
リチャードに抱きかかえれたハクチョウはすっかりリラックスした表情。
安心しきっている証拠だ。
毎回、すべての野生動物がこのようにこちらの誠意に答えて、愛情を表現してくるとは思わないが、まれにこうして誠意をつくした行いが種を越えて通じ合うこともある・・・・。
このエピソードは前回のペンギン同様、人間と動物の不思議な友情物語である。